Magenta

探偵部・・・?



起きる。 顔を洗う。 食べる。 用意をする。 学校へ出て行く。 朝のサイクルはこんなもんだと思っていた一人暮らし。 しかし、それはもろくも崩れ去る。 ドアから聞こえてくる轟音。 それは何かを求めているような音でもあり、人を脅迫する音でもあり、血気に迫る音でもある。 「トイレ貸してーーーー!!!しょーーーくーーーん!!」 朝にそんな大声出してトイレの話題と自分の名前を一緒にして言わないで欲しい・・・ しかも女の子が・・・ 「いやー助かったよー。学校の登校ルートで友達のうちっていったら君んちしかなくってさー。いやーははははは!!」 いい近所迷惑だ・・・ 遥歌はすっきりした表情で歩いている。 結局俺は、トイレを貸した後、遥歌といっしょに学校へといく羽目になった。 何でかわからないけど、そうなった。 何でだ? しかし、いくら知ってる人のうちでトイレをするといっても、男で、しかも昨日自己紹介したばかりのやつのうちに来るか? 帰り道で俺の家がばれたわけなんだが・・・ 「ほかの店とかでかりるとかできなかったのか」 「だってー恥ずかしくない?ハズカシいっしょ!!」 俺だったら会って間もない人のうちでするほうが恥ずかしい。 「おおっと、もう学校だね。あたしは日番だから先行くよー!!」 と言いながら先に学校の中へと入っていく。 ・・・俺ってこんなに早く学校に来る意味なかったよな・・・ 途中パン屋で買ったパンでも食べて、適当に時間を潰すことにした。 ・・・味のコメントは控えさせてもらおう。 ・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・ おかしい。 もう時計は8時20分を指しているというのに、誰も学校へ来ない。 ・・・ 『実は今日は学校の創立記念日だったんだ!!ごめん!!わすれてたよ』 とか言いつつ遥歌が来たならば俺もどうするか ってかそんな感じがめちゃくちゃするのですがどうでしょうか? 恐る恐る・・・ノートを開き、連絡事項についてのメールを読んでみる・・・ (最新更新記録  明日は創立記念日です。学校はあいていますが、授業や部活動は執り行えません。忘れ物などがある生徒、提出物のある生徒  のみ学校へと登校してください。  教員連絡:明日は教員も休みです。作業のない教員は自宅で遊ぶなりなんなりすればいいんじゃないですか?) ・・・ちなみに更新日時は昨日。つまり昨日の明日は今日だ。 なんて・・・ なんてひねりのないオチなんだ・・・ しかも最後のほう編集者みたいな人が疲れたみたいな文章になってるし。 ここで遥歌が本当に『創立記念日でした』とか言って出てきたら笑えるな。 とか思ってたら、どたばたという効果音がとても似合うんだろうなぁという調子で遥歌が廊下を通り過ぎようとしていた。 が、俺のいる教室の前で立ち止まり、息を切らせながら俺に言葉を発する。 その言葉は予想できた・・・ さっきまで俺が想像していた言葉だ。 「おかしいよ!!誰もいないよ!!先生も!!生徒も!!他の部活の人さえ!!」 しかし予想は真に外れるものだなぁ。 そんなことを思っていた。 それで事情を俺は説明した・・・ 「今日は創立記念日らしい」 ま、二秒もいらないんだがな。 「へ?ああー!!去年は休みの日がそれだったから振り替え休日ってものを念入りに言われて気にせずどことなーく  過ごしていたんだったなぁ」 感嘆系・・・ 「だから俺たちがここにいるのは間違いってことであって・・・」 教室のドアが開く音がした。 誰もいないという状況なので、結構そんな音にも注意がいくようになっている。 自分の部屋に誰かが突然入ってきたような気分だといったらわかりやすいだろうか。 「おっしゃー!!三番のりー!!」 飛鳥が入ってきた。 現在時刻8時25分過ぎ。 飛鳥・・・あほだろ・・・ 人のことを言えない俺と遥歌は微妙な顔で飛鳥の勝ち誇った顔を見るしかなかった・・・ で・・・飛鳥に説明をした後。 「え?ソウリツキネンビってどんな祝日だ?」 と、まじめに聞き返されたのには正直びっくりした。 やることがなくなったし、学校にいると言うこともない。 だから俺は二人にこの地区の案内を頼むことにした。 ま、制服なんだが、創立記念日という言い訳をフルで活用できる日はこんな日以外ないであろう。 だって本当だし。 補導されるとかは無縁のもので、そこで生徒証とか読み取ってもらえれば万事解決なのである。 全く世の中は便利になったものだなぁ・・・ とか大人は言っていた。 案内を頼んだ時、 「俺のお勧めの店、この指20本に入る名店を教えてやるぜ!!」 とか飛鳥は足の指までに入るお勧めの喫茶店やら、雑貨店やらを教えてくれるということを言った。 手はともかく、足の指に入る店はそれはいい店なのか? って言うか『ぜ』って使うな『ぜ』って・・・ 一方、遥歌のほうは、 「よっし!!ここらへんにある娯楽施設に案内してあげよう!!」 とか言ってる。 娯楽施設って言うのってなんか違うような気がするのは俺だけだろうか? カラオケやら、ボーリングやら、レストランやらいろいろと、らしいが・・・ 案内してもらうからには文句なんて言えないが・・・ 「あれ?翔クンじゃーん!何で制服なのさ?」 って学校の敷地を出てすぐに真昼に出くわした。 普段着だった。 ・・・ 「しかも制服って・・・ははーん・・・なるほど・・・」 ははーんとか使うやつ初めてだぞ今まで生きてきた中で、 「ずばり!!忘れ物だね!!」 そう言いながら、真昼の後ろから真夏が出てきた。 今まで気がつかなかった。 ってか今時、兄妹そろってどこかへ行くって仲のいい兄妹だな 「あ、まなちゃん!いたんだ、気がつかなかったよー!」 まなちゃんとは真夏のことだろうか、 「ふっふっふ・・・拙者、気配断ちの修行中にて心を空気に溶け込ませるというイメージを作り出しているのでござるよ」 真夏は目を細めながらふふんといたずら顔で笑って答える。 ござるってなんだろうか。 「あ〜、ちがってだな・・・今日が創立記念日だってことを知らなかったわけだ」 俺は無理やり話題を戻す。 ま、転校生であることも有ってそんなことまで考えてはいなかったと答えておくのが無難だろう。 「なるほどねー。残りの二人は?」 「あの二人は記憶から今日の日のことが抹消されていたらしい」 「そっか、さすがあの二人だ!!」 流石らしい・・・ その言葉を邪気のない顔で言う真昼はすごいやつだと思う。 「で、これから何をする予定?」 「俺はこの地区の案内を二人に頼んだんだが」 「おーう、だったら僕らも一緒に行こうかー」 「え、お前たちなんか用事があったんじゃあ・・・」 「いいんだって♪いつでもいけるし後にいったほうがいいし明日から土曜日だし面白そうだし♪」 理由4つ突きつけられた。 ま、断る理由もないけどな。 「じゃ、よろしく頼む」 「じゃ・・・まずは商店街のほうへ行くか・・・」 ・・・・・・・・・・・ 五郎が密かにいたのに今気がついた俺であった。 真の気配断ちの達人は身近にいた。 飛鳥は話しかけられなくて少し寂しそうにその場で正拳突きの練習をしていた。 「ここは俺の行きつけの店・・・うどん屋!!うどんがサイコーにうまい!!なんでも限りなく太陽光を再現させた光の下で  作られた小麦を使っているとか!!ま、それなりには値段はするが食べてみる価値ありだ!!」 飛鳥のお勧めの店はうどん屋だった。 ってかうどん屋すすめてうどん以外がうまいって言うのは考えられんだろ。 確かにいい匂いが漂ってきて、先ほど食べたパンの数倍おいしそうな味が想像できる。 ・・・・ 「ま、今は朝だしな昼にでも・・・」 「いや・・・昼には僕の行きつけのお店を紹介しよう・・・ふっふっふ」 メガネが光る・・・ どうやってそんな角度調節をしているんだか・・・ 「ここは・・・店だ」 ・・・・・ 店だ・・・しかしこんな店があるとは・・・ しかし、何だこの雰囲気が全体的に暗い店は・・・何を売っているのか非常に気になるのだが勇気が湧かない。 なんかハーブのような臭いや、こげた臭いや、甘い臭いやなんやらが漂ってくる。 こんなご時世に、娯楽だか宗教だか、そんなものははやる前に廃れるのだが、この店は廃れていない・・・ 信者と言うものがいるのだろうか・・・ 先ほども言った臭いは人を寄せ付けるような臭いもかもし出している・・・ 空調が完璧に作動してないのか、はたまた故意に空調設備をとめているのかそれはわからない。 「さ、次行こうか!!」 俺たちはその臭いに後を引かれながら去っていった。 確か名前はお好み焼きとかいったか? 「どぶしゅ」 いきなり飛鳥がこけた。 「いやーはっはっは」 ちょっと笑いながらその場を取り繕う。 「さぁ次に行こう!!」 で、歩き出す。 いや、この話はいらなかったんじゃないか? 「ここはー高校の寮になるんだー」 学校からずいぶんと離れた位置に寮があった。 外から見ると他の建物と区別がつかないのだが、寮の前にはちゃんと学生寮と表示があったため疑いようがなかった。 「私はここから通ってるんだー」 と真夏が話し出す。 ・・・ん? 「真昼たちも寮なのか?」 「いやいやー真夏だけ、僕たちは家から通ってるよ」 何で真夏だけ寮生活なんだろうか? 「あー、私朝とか乗り物とかそういうのが苦手なんでー」 真夏はちょっと困ったような顔をしながら言う。 乗り物酔いしやすいってやつだろうか? まぁ遠出するとか通学通勤する以外に乗り物を使う人は少ないからそういう人がいるというのは聞いたことがある。 かく言う俺も乗り物がちょっと苦手だったりする。 そういう人って言いながら自分も入るってのはちょっと悲しいものがあるな。 「この寮の朝ごはんはおいしいよー。週に一回くらい白いご飯が出るんだー」 真夏の顔がみるみるとさっきの困ったような顔から幸せそうな顔になって行き、目尻なんか垂れ下がっているくらいだ。 パンが主食の俺たちは米を食べられなかったりする。 加工したほうがおなかを満たせるという感じであり、農作地では米よりもパンのための農地が多い。 しかし米には人気というものがあり、寮こそ少ないものの作られているのだった。 少し・・・うらやましかったり。 「はい!!あたしはこれー」 これといわれても・・・ 目の前にはかなり大きな施設。 壁には合同体育館とか何とか。 「ジム!!体を鍛えたい時とかそういうときに通おうー!!私がよく行くのはスイミングのとこだけどー」 体育の時間にけっこうやらされる(週一時間は当たり前)というのに水泳が好きとは・・・ 水泳部に入ったほうがいいのでは?と思ったりもするんだが、 楽しむためだけに行くって感じだろうか? 「僕の紹介するところはここ!!」 商店街の中間、とてもいい立地でカフェがあった。 ・・・・・ 「え?喫茶店?」 「そう!!ここがお勧めなんだ!!なんといっても親切価格でとても美味な料理を提供してくれる!!」 しかし意外だ。 真昼だからてっきりとんでもない店を紹介するんじゃないかと思ったんだがそうでもないらしい。 見る限りでは普通の喫茶店、 いやしかし内装がどうだとかそういうものがあるのかもしれない。 「いらっしゃいませー」 と、店員の声。 ・・・って普通だ!! 内装も普通で店員も普通。 ただ多少客の数が多いようだった。 「お客様何名さまでしょうか?」 レストランを思わせる言葉。 「六名さまです!!」 「自分で『様』つけるな真昼」 「おタバコはお吸いになりますか?」 「僕たち高校生!!」 「お前それ返事になってないからな」 「え?そう?」 「じゃあこちらの席へ、六名様になりますとテーブルが分かれますがよろしいですか?」 「どんとこい!!」 俺はもう突っ込まないことにした。 なんか疲れるし・・・ テーブルに案内され、四人席は男子グループ、二人席は女子グループと言ったように自然と別れた。 男子四人で喫茶店ってなんか悲しい図だよな・・・ 「注文どうする?ハルちゃん?」 「あたしは〜これ!!なんかめちゃおいしそ〜、でもたかいな〜」 「大丈夫、全部真昼もちだから」 隣のテーブルから和気藹々とメニューを覗き込む女子二人。 「え"っ」 「すまないな真昼。そこまで部員思いだとは思わなかった」 俺は謝罪した。 まさかここまでこの部活に力をいれているなんて・・・ 俺は感動もしておいた(小さじ一杯) 「えっえ?」 「お腹がすいてるんだ。軽食頼ませてもらうぞ」 「ちょっちょっとまってよ翔クン?」 「うっそマジ!!おごってくれんの?じゃあおれクリームソーダ!!」 飛鳥・・・ 「じゃあ俺はホット」 とわいわいがやがやとしていると、 「ご注文お決まりになりましたか?」 「あ、こちらも一緒で!!会計はうちの兄が」 「任せといてください!!」 ・・・真昼の態度が豹変した。 「コレくらいどうってことないですよ。部員を思いやる気持ちが部長には必要なんですはっはっはっは」 わざと低い声を出し威厳を出している感じだ。 「わぁ、すばらしい部長さんですね」 店員さんは営業スマイルを忘れない。 「いえいえ、それほどでも・・・さぁみんな好きなものを頼むがいい」 真昼は両ひじをテーブルにつき顔の前で手を組む。 そしておもむろにメガネをなおす。 「じゃあクリームソーダとアップルパイ!!」 「ホット1つ」 「コッチもホット1つ、それとクラブハウスサンドこれも一つで」 「イチゴパフェ!!」 「ミルクレープ!!」 「・・・」 ・・・・・・・・・


「ホット・・・」 「かしこまりました。ごゆっくり・・・」 ・・・・・・・・・ 「真昼、ホント悪いな、ご馳走になっちゃって」 真昼の気遣いのおかげで俺は昼ごはんにお金を使わずにすんだ。 「あぁ・・・まぁ翔クンはいいや・・・そこの女子二人組み?なんていうか単価が高いという」 「うーん、おいしい!!やっぱり部長!!頼りになるー!!」 使いどころ間違っていそうだが褒め言葉として受け取っておくんだ真昼。 「う、うん・・・あ、飛鳥!!ちょっとお金持ってたりする?」 「オレがもってると思うか〜?」 ニヤニヤしながら飛鳥は真昼を見る。 「それもそうだね。ゴロー」 真昼は早々に飛鳥との会話を切り上げ五郎に話しかける。 「ちょ!!それひどくないですか!?」 「持ってきている」 五郎も飛鳥の話を切る。 「あ、よかったーちょっとさぁ・・・」 真昼は結局、お金を持っていなかったのか五郎からお金を少し借りて会計を済ませた。 「ふぅ〜食った食ったー」 飛鳥御満悦。 ってかアップルパイなんてよくあったな。 何だかんだいってお腹に一番たまりそうなものを食べたのはこいつだしな。 「やっぱり先輩はいいな〜・・・」 真昼は心ここにあらず。 何を考えてるんだか・・・ 「さてと、これからどうするー?一部お金が無い人がいそうですがー」 先頭に立っている遥歌が振り向きながらいう。 ちなみにお金の無い人は真昼と飛鳥をさしているのだと思う。 真昼は固まりながら笑っている。 「あ、オレ帰って昼ドラ見よ!!ちょうど愛人と妻が鉢合わせしたところなんだ!!」 なんてもの見てるんだ飛鳥。 「ってことでバイビー」 と去っていった。 ・・・学校時間にある昼ドラをどうやってみているんだ飛鳥よ・・・ もしやノートに授業中映し出して見ているんではなかろうな。 ま、ありえるか、飛鳥だし。 「ぼっ僕もちょっと今日は止めておくかな」 珍しい、しかし真昼も先立つものがなければこうもなるか。 「じゃあ、また学校で・・・」 とぼとぼと帰路に着く真昼。 その背中には探偵部部長の威光はなかった。 「カラオケでも行くー?」 真夏がなんか言い出した。 いきなりだ、いきなりすぎる。 「平日、午後早く、しかもここに割引メールあり!!」 携帯を掲げながら遥歌は叫ぶ。 そんなに叫ばなくとも。 しかしなぜそこまで準備がいいんだ? 「暇だし俺はいいが」 そう言いながら五郎を見る。 「俺もいい」 「じゃ!!行きましょー!!」 と言うことで部員二人抜きでカラオケに行くことになった。 行き当たりばったりだなぁと思いながらも俺たちは結構楽しめたと思う。 五郎は歌うんだろうかとちょっと心配したりもしたが、結構最近の曲も歌えるらしくしかも結構うまかったりした。 真夏、遥歌の二人は言うまでもなく、最新の歌まで歌いこなせ、はしゃぎまわっていた。 なんか探偵部にはいって本当に間もないが、やってきたばかりの俺によくしてもらって感謝した。


部活メンバーみんなとの距離が縮まったような気がした。 そんな日だった。 小説トップへ
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