BATON
だんだんと忍び寄る足音・・・

ただただ息を殺し、身を縮めその場にいる・・・

少しでも動いたり声を出してしまうと見つかってしまう・・・

ただその場にいるそれだけでも重い空気に押しつぶされそうだ・・・


残るは一人・・・

僕は意を決して夜のキャンパスを駆ける・・・



激走!!大学24時まで!!



「おっれは武ー、がーきだいしょ〜てぇんかむ〜てき〜のお〜とこだぜ〜」
「長瀬君・・・その歌やばいって」
「そうか〜?俺の持ち歌の中でベスト10には入るほどの歌だぞ」
「なんていうか・・・似合いすぎなんだよ」

僕はなぜか大学のほうへ来ている・・・
季節は夏。
大学生であるとしてもないとしても、夏休み真っ盛りである。
なぜここに来たかというと・・・



『「グッイーブニン!!Mr.SASAHARA!!How are you!」
 「夜でもハイテンションだねー長瀬君」
 「それがオレの・・・とりえですからして!!」
 「いっつも5時間目寝てすごしているしてくるくせに」
 「そーれとこーれとははなしがちーがいますからねー」
 なんだこの異様な空気は・・・
 めちゃくちゃ嫌な予感がする・・・
 「じゃ、またね」
 僕は長瀬君にそういうと逆を向いて歩いていき・・・
 「ササゲット」
 たかった・・・・
 「ななっ!!?」
 僕は長瀬君の肩に担がれ見事人質といった形になってしまった。
 「小林さーんちょっとササ、かりていきますねー」
 長瀬君は家の中に向かってそう言う。
 「はーいー。裕之さん、いってらっしゃいー」
 翔子さんはにこやかに僕を送る。
 「あーーーーれーーーーー」』


ということで・・・
「そろそろ何をやるか教えて欲しいんですけどね・・・あと、そろそろおろしてくれると助かるんですけどねぇ・・・」
僕は朝の体制のままいる。
「ああ、すまんすまん」
やっと地に足が着く・・・
・・・・・・・・あれが長瀬君の目に移る世界か・・・
あの・・・全てのものを見下ろせるというか・・・見渡せるというか・・・
「そうだな。実は今日、あるイベントが開かれることになってな」
「イベント?」
「そうだ、そこである種目で競い合うというイベントだ。なんとも、優勝者にはとてもすごい商品が与えられるという」


「その説明は私から執り行おう!!」
どこからか聞こえる声。
・・・上か!!
僕が見上げるとそこにはある一人の人が立っていた。
・・・木の上に

「そっその声は!?」
長瀬君はとってつけたような言葉をしゃべる。
「えー・・・」
僕はその言葉に難癖をつける。


「とう!!」
木の上(枝、地上より2mほど)から飛び降りて地面につき・・・
「・・・っ!!?」
足がしびれたっぽい、苦痛の色を浮かべている。
ちょっとふらつきながらも体制を整える。
そして、僕に向かってズバシ!!と指を突きつける。
・・・身長は僕より高い・・・

「私の名前は本間香奈!!『ほんまかな』であります!!」
ちょっとなみだ目になりながら言う。
・・・女版、長瀬君っぽい・・・

「ほんまかなー?」
長瀬君は思わずであろう、たぶん・・・いきなりNGワードを発した。

その直後、ズバァァァン!!という音とともに長瀬君の頭に本間さんから放たれた大きなハリセンが直撃した。

・・・どこからだした!?
何も持ってなかったのに!!服も半そでで隠すところなんてないのに!!

長瀬君は顔を抑えてのた打ち回っている。

「それ禁句♪」

・・・やっぱりだ・・・

「やあ少年!!キミも参加者でしょう?」
本間さんは僕を見て言う。
「・・・たぶん・・・」
「よく見ると君は・・・女?」
「いや、男です。しかも三年です」
・・・慣れた。
「よくきましたーこの血で血を洗うサバイバルに!!」
「何ですかそれ?」
もうどうでもいい。
巻き込まれなれた・・・
「この時期にいつも開催されるイベントで、毎年毎年大勢の方が参加されるビッグイベント!!」
は〜〜〜ん・・・嫌な予感がする。
「今回の種目はーーー!!!鬼ごっこーーー!!」
「へぇぇぇえええ」
正直どんな種目かなんて興味はない。

「そして今回与えられる優勝商品は!!・・・・」

(ダラララララララララララララララララ・・・)
どこからともなく聞こえてくるドラム音・・・
と思ったら草葉の影で三人くらいの人が口でいっていた。
何だこの人たち・・・
(ダダダン!!)

「二位の人への一度だけ絶対命令けーん!!」

「・・・・・・」
参加することに意味はあるのだろうか・・・
「ササ・・・お前は盾だ。オレが一位をとるからな」
長瀬君は復活した。
ってか・・・大きなイベントといっても知ってる人しか知らない寄り合いのイベントじゃないか・・・
しかも、元手いらず・・・

「長瀬君・・・帰っていいかな?」
「だめぇ〜♪」
気持ち悪い声を出す・・・

「・・・・」
まぁいいや・・・

「本間さん」
「カナと呼べ♪」
・・・怖い・・・

「かっ・・・カナさん」
「なんですか〜しょうねーん♪」
20越えてて少年といわれるのもナンなんですけど・・・
「参加辞退って・・・」
「できません♪参加表に名前を書いてしまった人は今日一日♪」
「よかったー・・・僕まだ書いてないよー」

ふと横を見ると、長瀬君はある人からノートを渡され、サインをしていた。

「もしかして今、僕の名前書いてた?」
「俺がそんなことするわけないだろー」

よかった・・・長瀬君はなんだかんだいって最後には僕の意見を
「昨日からお前のは参加にしてあるぞ」
踏みにじってくださるんですから!!


「さ、参加と決まれば君たちはーたいーくかんにいってくだサーイ。とっても重要な話がありますのでー」

そう言いながら本間さんは木によじ登っていく。
・・・




「とう!!」
次に来た人を驚かしていた。
影の人もスタンバイをしていた・・・







「はーい!!みなさーん準備はいいですかーーー!!」
「は〜〜い」
「元気ぃ?」
「元気ぃ!」
「勇気!!」
「勇気!!」

・・・・
何 か の 間 違 い だ ろ う か ?

一瞬、教育番組の冒頭が頭の中に浮かんだ。
本間さんが司会をしている。
・・・ボスか・・・今回のボスだな・・・
なんか予感がする・・・

「そこ!!ボスとか言わない!!」
ESP!!?

「私はESPじゃないですよ!!」
やっぱESPだ!!




「はい、じゃあ説明を始めます。まず、この人がはじめに鬼になり鬼ごっこがスタートします」
そういって鬼と言われた人は・・・
影の人Aだった・・・

かわいそうに・・・赤いタイツに角つけられて・・・

「が・・・がおーーー・・・」

ああーーー
あの人にそういえって言われたんだな・・・かわいそうに・・・顔が真っ赤だ・・・

「この鬼ごっこはサバイバル!!捕まえられたらその人も鬼に!!そういうルールになっています!!」

へー・・・昔なんとかのチャレンジャーってやつで見たことあるよ。

「このゼッケンで鬼かどうかを判断します!!」

ああー全く同じだなー。
後ろと前にマジックテープでつけられた『抜け忍』という文字の書かれたゼッケン。

・・・独創的だ・・・

「完全オリジナルのわたし・・・わ・た・し・が!!考えたルールです」

ああー私ルールだー・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・どこがだ・・・

「制限時間は無制限!!ちなみに逃げられるところは大学内全部!!しかも灯りは最小限の外の光のみ!!最後の一人になるまで生き残れー!!
 しかし12時までね。門限」

変に律儀だ。

「さあ・・・君は生き残ることができるか!!生徒の生徒による生徒のためのイベント!!このイベントのため夜も寝られずに目を赤ーく
 してきた人もいるのではないでしょうか!!私はちなみに小学校のころ遠足の前の日はあまり寝られなかったほう!!そして寝坊した!!
 今、緊張の一瞬!!私の合図でこのイベントは始まります!!どきどきしますねーわくわくしますねー!!この私が企画&要望&実行
 かっこ今まさに実行しようとしている私カッコとじ(←本当に言った)をしたこの騒然、豪華絢爛、一撃必殺(←意味不明)たるイベントが
 もうまもなく!!ちっくしょうにくいねぇ!!この企画によって彼氏いない暦イコール年齢の私にもチャンスが来るんじゃないでしょうか!!
 うおうヒャッホウ!!やったね畜生!!この場をかりて彼氏ぼしゅーみたいなーってくぅーーー!!うわやっべ燃えてきた!!早く始めよ!!」

・・・何だこの人は・・・一人で盛り上がっている・・・
早々につかまって僕は鬼となり安息を得ようを思います。
長瀬君ごめんなさい。
僕は君を裏切ります。

「よーし!!いっくぞー」

本間さんはマイクを構える。

「あ、私も参加しますからねー一番最初っから10番目までの人はゼッケン代払ってもらいます」

!!?
「はじめー!!!♪」


僕は必死こいて逃げ、

「ハイ捕獲ー」

ものの三秒で長瀬君に捕獲された。
肩に担がれ僕は漁師の人の肩に乗ったわかめのような状態になった。




しばらく走ってから、なんかわからないけど隣にいた人に長瀬君は得意げに、
「俺の盾ー♪」
と自慢げに僕のことをはなす。
僕は盾決定らしい。
「あ、ああそうなんですか・・・」
やっぱ困ってるじゃないかーもー(←もう鬼ごっこなどどうでもいい)


でも長瀬君の肩に担がれていれば最初の十人くらいは大丈夫なんじゃないかな?
まぁ実質的に損害がなければ僕はいい。

長瀬君はとある棟の一番上へと走っていく。

ああー楽だ・・・

「ふう・・・ここまで来れば安心だ」

そういって教室の中に入る。
・・・窓から・・・

「なんで鍵が開いてるの?・・・」
「ふふふ・・・昼のうちからこの窓の鍵だけは開けておいたのだ」
・・・

何の盛り上がりもなく終わってしまうのか?
この鬼ごっこ・・・

「ってかこれはこれで反則なんじゃないかなぁ・・・実際開いてる教室なんて限られてるものだし・・・」
「・・・・」
「無理やり大会参加のための費用を払わされたり・・・」
「・・・・・・・・」
「ねぇ?」
「でるぞ」

長瀬君はこういうのに弱かったりする。


教室から出ると足音が聞こえる。
そして声も聞こえた。
僕らは息を潜め、廊下と階段の間に身をおきその声のするほうへ耳を傾ける。

「ひとーつ、ヒーローものは欠かさず見る」

ぺたぺたと近寄ってくる足音。

「ふたーつ、福沢諭吉は大好きで」

ぴたっと目の前で止まる一つの影。

「みーっつ・・・私は」

こちらを向く。

「見逃さない!!」

何の脈絡もないこのセリフだが夜に聞くと少し怖かったりする。
しかもこっちを向いたとき目が光った。

あの司会の人の顔だ・・・

「よし!!ササ!!出番だ!!」

「へっ?出番ってn」

僕が言い終わる前に長瀬君は僕の服をつかみ思いっきり振りかぶって投げる。

つかんだところが悪かったのか、僕だけ投げ出さたとき、服が脱げた。
ペチーンと廊下に叩きつけられる背中。
そして勢いあまり、足で本間の足をベチンと払ってしまった。
そのため本間も廊下にお尻から落ちる。






・・・・・・
背中が痛い・・・

長瀬のせいで俺の上着はシャツ一枚になった。
夏とはいえ夜中は少し肌寒かったり・・・

「うー・・・お尻痛いー」
本間はその場で座っている。
よく見たらゼッケンをつけていた。

なんだよ脅しかよ。

「あーあ何だよそれ・・・」
俺は背中をさすって大事はないか確かめる。
大丈夫だった。
「ち・・・長瀬のやつ本当に盾に使いやがった」

「ふ・・・じゃあな!!ササ!!」
長瀬は階下へと逃げていく。
足音がどんどんと小さくなっていき、もう追いつけないだろう。

くそ・・・痛みがなければ・・・

「おい、お前、よくも騙してくれたな」
俺は本間に詰め寄る。
本間はむっっとした顔で、
「そりゃあこの世は弱肉強食、強いものが生き残るように作られている!!しかし!!弱いものは生き残るために知力をつけ強いものに立ち向かって
 いくものです!!戦略と情報分析、知略をめぐらすことは集団の中で生き残る術だから!!」

なるほど一理ある。

こいつは意外と頭が回るらしい。

俺は敵ではあるが鬼ではないので安心した。

「ってか少年。さっきと性格全然違うような気が・・・」
何をいっているんだこいつは・・・
「まぁ気にするな」
話をそらしておくとしよう。

俺は上着を探す・・・
それはすぐそばにあった。

が、それは本間の下敷きになっていた。

「・・・」
「あのー・・・少年・・・私、お尻強く打ったせいか立てなくなってしまったのですが・・・」

・・・





(ガタ・・・)
何かが揺れる音。
その音のほうを向いて警戒する。

「いたぞー!!」

!!?みつかった!?

大学内はほとんど灯りは無く、夜目が利くといっても早々遠くでは見つからない。


仕方が無い・・・

「おい、逃げるぞ!!その下に敷いてる服はしっかり持っておけよ!!」

俺は本間の手を引いて走り出す。

「のぉおおおおおおおおお!!」







大学付属の図書館に入る。
そして、休憩・・・

「いやいや・・・先ほどは・・・助けて・・・いただき恐悦至極・・・かたじけない」

本間は息を切らしながらも深々と頭を下げる。
「それは・・・自分のためだ・・・誰のためでもない・・・」

俺は深呼吸する。

「それで俺の服は?」
「え・・・」

凝固、凍結・・・

「俺の服は?」
「えっと・・・その・・・落としました」

・・・・

「うう・・・ごめんなさい・・・」
「ゼッケンが取られてたら俺は・・・」
「で、でもでもそれって案外カモフラージュ?見たいな感じで人を騙すのに使えたりできたりしちゃったり〜・・・」
「・・・・・・探してくる」
「少年すまん!!」

パン!!と目の前で手を合わせて謝る。
「堪忍しておくれやす〜」

反省の色が見え隠れする微妙な物言い・・・

もういい・・・
俺は図書館から出て走ってきた道を戻っていく。

何だかんだ言って、もう二十分くらい開始からたっていた。
もうそれなりの人がつかまって鬼と化しているだろう・・・
油断はできない・・・
キャンパスには外灯も立っており、あまりいることをばらすのはよくない。
ゼッケンが無いとしても、回収する時に目をつけられていたとしたら・・・


・・・あれ・・・こういう場合って説明無かったな・・・
開始前には想像もできないありえない状況に俺はなっているんだな。
これって反則とかあるのか?


そう思っている時に自分の服を見つけた。
外灯の真下に落ちていた。

・・・・・・・


身を低くして最速で服を取っていく。
その時誰かに気づかれた。


「!?」


ち・・・やはり見つかった。
目立つようなまねを少しでもすると気づかれてしまう。
小学校のころの鬼ごっことはわけが違う臨場感。
本気で逃げようとしないともう生き残れないところまで来ている。



「ササー♪」
嫌な予感・・・

向こうからやってくるのだがまだゼッケンをつけている。
長瀬・・・

「よう♪無事だったか!!」
何の気遣いも謝罪も無く話し始める・・・
ふつふつと怒りのボルテージが上がっていく。

「おまえ・・・人を投げておいてそれか・・・」
俺は我慢しきれずに最低限の悪態をつく。
「ちょっとは人のこと考えて行動しろ!!こので怪物!!(でかい+怪物)」

長瀬はぎょっとする・・・
そして僕の顔を覗き込み、
「うーん・・・さしずめ・・・」
少し考えてからこう言う。
「笹原無糖・・・」

・・・・・・・

「キシャーーー!!!」
「うお!!ササ無糖が怒ったーー!!」
きゃっきゃと喜んでいるようにも見える長瀬・・・
こいつ・・・ぶっ潰す・・・

がし!!

しかし俺の身長は長瀬と違いすぎ、すぐに捕まえられてしまった。

「わりぃな!!もう一回使わせてもらうわ!!」
背後からゼッケンのついていない人が現れる。

「ササ・・・」
「え、ちょっまっt」
「ロケェエエエエエエエエエエエッツ!!!」

ブンと大振りに投げ出され弧を描いて飛んでいる俺・・・
ああ・・・身長差とはこうも抗えようの無い宿命なのか・・・
今度は服は脱げなかったが、その分威力も増したということになる。
俺は受身をとることもできずにその鬼である人に当たって俺は崩れ落ちた・・・





・・・
うう・・・おなかと背中が痛い・・・
こういう運動系とか苦手なんですけど・・・僕・・・
何でか知らないけど、僕の下には鬼の人が伸びていた。
やばい・・・この人が起き上がったらすぐさまこのゼッケンは取られてしまうのだろう。
その場から離れて、目をつけられないようにすることが第一だと思った。



人目を気にしながらも、図書館に入る。
図書館の中は静まり返っていて、誰もいそうな雰囲気は無い。
ちょっと疲れたので待合のソファーで休憩する。

「ふぅ・・・」

そして、タバコに火をつけ、プカプカと煙を浮かす・・・

ってなことをサラリーマンの人とかするんだろうなー・・・
僕はタバコは吸わない・・・っていうか煙っぽいのが苦手だ。
タバコの臭いもあんまりすきじゃないし、健康に悪いというから吸わない。

ソファーから目を上げてみる。

・・・・・・・向かいのソファーに寝転がっている人がいた。
しかもゼッケンつけてるし・・・

「スピーーーーすぴかーーー」
・・・おとめ座?

いやいや、ほんとに寝てるよこの人・・・

「おーい、夜ですよー」
僕は呼びかけてみる。
「・・・」
返答なし。
「おーい、鬼ごっこ中ですよー」
「・・・」
返答なし。
「学園祭って面白そうだよねーいろんな人たちやサークルの人たちがにぎわってさー」
「中でもいろいろ苦労しているんですよ実行委員長は〜わかる?毎年毎年いろんな企画やらゲストやらを考えなくちゃいけないなーと思いましてー
 そこに来る人たちがちょっとでもああ、実行委員長たちは大変なんだなぁって思ってくれれば私は満足なんだけども、その役割から学園祭を
 見て回ることが全然できないんですよ。はいー、だから私はこの鬼ごっこで二位の人に実行委員長の仕事を二時間三時間押し付けて回ってやろうという
 計画なんですよ。わかります?わかりますこの葛藤が?そこで新たなる出会いとかあったらもーたなぼたじゃん?だから私はこの鬼ごっこに全てをかけて
 やっていこうという所存でありますよー。彼氏いない暦イコール年齢の私にとっては由々しき問題とチャンスなのであり、この機会に頑張ろう
 というわけですねはいー」

・・・起きた・・・
すごい勢いで起きた・・・
ってか眠っててよく鬼に目をつけられなかったなぁ
もう時間的に大半の人は鬼となっているんだろう。

「ふわ〜ぁ・・・」
あくびをする本間さん。
「本間さん」
「カナと呼べ♪」
やっぱ怖い・・・

「そろそろ逃げないとやばげなんですが・・・ここも人が来ないとは限らないですし・・・」

目で外を確認するあたり鬼は二・三人いる。

「まぁそれもそうなんだけどねーあまり気にしないでいいとおもうよー」
髪を直しながら言う。
「あ、服見つかったんだーよかったね少年」
?・・・
何言ってるんだろう・・・

「気にしないでいいって言ったのは簡単に言えば鬼となった人は何の商品も無いから半数くらいの人が自分で帰ってしまうと思うのですよ」
説明口調となる。
「つまり、絶対命令権が無くなった人はいる意味が無くて、ただ遊びとしてやっている人だけが残ると・・・」
「そのとおりーご名答、ご褒美に飴を上げよう」

黒飴が出てきた。

「ま、最初の十人は実行委員で捕獲しるから大丈夫。お金を払うのはその十人ですからねぇ・・・けっけっけ」
すごいずるがしこそうな顔をしながらほん・・・カナさんは笑う。
「あ、ちなみにこのゼッケン探知機内蔵」
「・・・・・・」
「近くの大学の工学部の友達が気まぐれに作ったものをもらってつけたのであーる!!」
「・・・・・・」
ゼッケン代を払う人・・・ご愁傷様・・・



その時、放送が聞こえる。

『のこり、後三名。三名です』

・・・え・・・

いつの間にか僕は三位のところまで登りつめていた。
一位の権利にも興味ないし、二位は嫌なポジションだし・・・このまま三位のままでつかまるのもいいかな・・・

「おっと、少年。後ちょっとだ。このまま私は逃げ切るぞ。私には達せねばならん目的があるのでな!!」


フハハハハハハという大きな声とともに図書館から出て行くカナさん。

その声に気がついて鬼(暇な人たち)がいっせいにカナさんに向かっていく。

「いーーーーやぁーーーーーー!!!」

なおも声を上げて逃げ惑う・・・

あの人案外考えなしだったり・・・

でもこのままだと危険だ。
僕が三位にならなくては危険が及んでしまう。


僕も図書館から出て行く。
そして叫ぶ。
「コッチに二人いたぞー!!」
「なにぃ!!いくぞーーー!!」
「忍者が里を離れた制裁をくわえてくれるわ!!」

といいながらコッチに向かってくる。

これで僕は安全だ。
しかし背後に何かの気配。
「うお!!ばれた!!」
・・・長瀬君だった。

・・・案外うそはつけないものですね。

むんずと僕を持ち上げて・・・

「ササシュウウウウウト!!」
投げられる。


二度も食らう僕ではない!!
しかもいたいのはごめんだ!!
投げられる瞬間、僕は何かをつかみ減速を試みた。
しかしべりっという音とともにつかんだものははがれ、僕の手に残る。

「なっなんとー」

でも、体勢を空中で立て直し、地面に足をつき、踏ん張る。
靴底が擦り減るのなんて関係ない。

ずさぁぁぁ!!
そして鬼の目の前に・・・


「はい、ご苦労さん」
僕の持っていたゼッケンは奪われ、僕は鬼ごっこの組から脱落し・・・



・・・・前、ある・・・後ろ、ある・・・


?




鬼の人たちは長瀬君を追っていく。
僕の周りには鬼がいなくなった。


あ・・・あのとられたゼッケンって・・・・




「ぅぉぉぉぉぉ!!!!」



遠くのほうで長瀬君の声がした。






まずい・・・非常にまずい・・・
三位に慣れなかった時点で僕は何かをすることが決まってしまった。

逃げようも逃げられない。

二位になるのはまずい・・・
二位になるくらいならいっそ一位になって何か願うということも・・・
なにかいいものは・・・



「まてー!!」


なんか大泥棒の三代目を捕まえようとして必死になっている刑事のような声を出して鬼の軍団(←一応表現は適切)がやってくる。


「うっうわーーー!!」

僕は必死になって逃げ出す。


「うえーーーん!!」

前からも誰かがやってくる。
カナさんだ。

アッチも鬼の軍団に追われている。
つまり挟み撃ち状態。

・・・もうどうにでもなれーーー!!





ずべ!!
・・・・・・・・・って僕はこけた。


「おおぅ!!」
僕に躓いてカナさんもこけた。
で、僕は潰された。


「ぐふぅ・・・」


べりっとゼッケンがはがされる。








「ということで一位の座は笹原裕之さんに決定いたしましたー」

やる気のない司会者・・・
少し罪悪感が・・・

「二位は私ぃー本間香奈ちゃんでありますからーなんぞ命令をしてくださいぃ〜」

だんだんと罪悪感が・・・

マイクを向けられる・・・

うーん・・・
じーーーーーっとカナさんを見る。
うーん・・・


突然カナさんは顔を赤くして騒ぎ出す。
「そっそんなり見つめられてもーわたしー、年下には興味が無いって言うかーなんていうかーどちらかといえばかっこいい系の人が好みであってー
 少年のような可愛い顔の人には興味が無いんだけどもー、でも命令といっちゃあしょうがないからーって言うか最初は友達からね?それ以降は
 関係しだいって言うかなんていうかってきゃー!!もうこんな公衆(?)の面前でこんなことを言うなんて、なんて大胆な!!でもーわたしには
 断る権利も無いしーいざそうなるとしたら結構性格とかあってたり?あはははは!!」

・・・何の話だろう・・・
というか僕は本当に年下なんだろうか。

とにかく命令か。
よし・・・

「二位の人は学園祭の二日目、三位の人と役割を交代することを命ずる!!」

三位の人、すなわち長瀬君(二日目暇人)
しかも今回、めちゃくちゃしてくれたし、文字通り振り回してくれたし・・・

卑怯者には制裁を・・・ふふふ


「エ"・・・」
長瀬君は声にならない声を発する。

「うわ、三位のひとかわいそ」
「あの一位の人結構やるね・・・」

と周りから声が聞こえる。

「少年・・・」
カナさんは僕に向かって言う。
「君はなんていい子なんだーーー!!」
肩をバンバン叩かれる。
そして握手を求められる。
手を出すとその手をつかんでぶんぶんと振り回す。
そして肩を組む。

「友!!」

どっかの首相の挨拶のように肩を組みつつ握手を交わす。


何はともあれ何事も無くこの出来事が終わったことに僕は安堵した。


なんだかわからないうちに友達もできた・・・
遊びにしてもなんにしても、友達ができることはいいことだ。


「納得いかねーーー!!」


この夜、一つの咆哮が街にこだました。
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