BATON
「ササ、俺犬飼ってるんだ。家も近くなったことだし散歩がてら見せてやるよ。」
そんな長瀬君の一言から始まった・・・
僕はもう後戻りはできない。

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犬だ・・・
僕の前に犬がいる・・・

昔のことを思い出す。


「母さん・・・このこ・・・」
僕は道端にすててあった犬を家まで連れて帰ったことがあった。
その犬は泥だらけで寒そうに震えていたため、無視しようともできるはずがなかった。
「・・・・・・」
母さんはとてもいやな顔をする。
「あんた・・・それ・・・」
僕のほうを指差していう。
僕の腕の中には一匹の子犬。
「それよそ行きの服だから汚すなって行ったでしょ!!」
「えーーー!!!」

犬はぜんぜんオッケーだった。

妹の希美(きみ)も、
「でかした!!お兄ちゃん!!これからいっぱい遊んであげるからね♪」
とぜんぜん躊躇もせずに受け止める。
「明日会社帰りにドックフードでも飼ってきてやろうじゃないか・・・いや、まだ赤ちゃんだから離乳食か?」
と、父さんも犬は好きみたいですぐにでも何か芸を教えようとしているほどだった。

その犬は今も元気にうちの実家で暮らしている。
それはもうかわいがられていて、家に来てもう五年くらいたとうというのに散歩は誰が行くかで取り合いになるほど愛されている。


そんな中の僕は一人・・・

「なまえ!!名前はなんていうの!?この子の名前!!」
「らっラッシー・・・」
長瀬君は世界名作劇場が好きだ。
だからシープドックのこの子の名前もそうしたんだろう。
「らっしーーー♪ラッシーー♪」
「おまえ・・・端から見たら女に見えるぞ」
今の僕の耳には誰の言葉も届かない。
僕の耳はすべてラッシーに持っていかれた。

ピンとたった耳・・・スマートな鼻先・・・とてもすばらしい毛並み・・・堂々とした歩き方・・・
穏やかな目・・・

ラッシーがすべての僕の感覚を奪った。

僕はラッシーに会うために用意したものを取り出した。
「ほら、ラッシー♪ボールだよボール!!かみやすーいゴムボール!!」
僕はラッシーの前にそのボールをかざす。
ラッシーはそのボールを見て匂いをかぎに来た・・・
そしてすかさず僕はラッシーの頭をなでる。

ふさ・・・

「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・おまえ・・・顔が緩みっぱなしだぞ・・・」
「ふぁぁぁぁ・・・・」
「大丈夫か?ササ・・・マジで女の子みたいだぞ」

そして僕はそのゴムボールをそばに落として、ラッシーがボールに噛み付きやすいようにしてあげる。
ラッシーはそのボールを両前足でつかみ、噛んで遊んでいる。

「なごむなぁ・・・」
「こいつ、ボールをとってこーいってやつできるぞ。」
「なんかそれってラッシーが疲れちゃうんじゃ・・・」
「・・・あのなぁ。犬は構ってくれるのがうれしいんだよ。だからそれをしたらもっとなついてくれるぞ」
「ほんと!?」
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