BATON
〜豊かな家族〜



暖かな日差しが降り注ぐ中、僕は見慣れない道を歩いていた。
道はあっているはずなんだけど、どこもかしこも家、家、家。
いっこうに目的地が見つかるような気がしない。
仕方なくそばにいたおばさんに聞いてみた。
「ここから坂道を上ると、すぐ左に赤い屋根のうちがありますから」
「ありがとうございます」
素直に最初から聞いとけばよかった。
「この坂って・・・」
見てみると、そこにはとても長い階段が・・・
雪が積もればスキー上級者向けのコースになりそうなくらいの急斜面。
上るのか・・・



ようやく上り切った。
肩で息をするほどにつかれてしまった。
運動不足を痛感・・・
そんなことはよしとして早速、


「あれっ?」
僕は思わず声を上げた。
赤い屋根のうち・・・
ここ交番じゃん。



交番のお巡りさんのおかげで、やっとのことで目的地に到着できた。
時刻は5時半、



四時間もさまよったのか僕は・・・
我ながら今まで交番に行かなかったことがアホらしく思えた。

何はともあれ、無事に(使用時間除く)つけただけでもいいとしようよ、ねぇ?
僕は小林さん家のベルを一回ならした。(ブー)

ブザーだった。

程なくして家から声が聞こえてきた。
「はーい、今開けまーす」
一人の女性の声だった。
ガチャリと開くドア。
(がらがらがら)

と思ったら引き戸だった。

「?どちらさま?」「今日からお世話になります笹原 裕之(ささはらひろゆき)といい
ます。どうぞよろしく」
笑点のあの人のような口振りでいった。
「ああ、遅かったので心配しましたよー」
「すいません、なにぶん道が初めてなもんで」
僕は頭を掻きながら愛想笑いをした。
「疲れたでしょう〜さあ上がってくださいな」
僕はすすめられるがままに家に上がった。
家の造りは純和風。
でもなく、ごく一般的な内装であった。フローリングはピカピカでよく掃除をしているら
しく、すべりそうなくらいだ。
(ズテッ)



すべった。
「大丈夫?」
「え、ええ」
お尻がひりひりする。


「ここがあなたの部屋、これから自由に使っていいからね」「はい。荷物は〜」「業者の
人が一日都合で遅れるっていってました。すいませんが、一日待ってもらえます?」
と言われても、無い物はしょうがないし、なくても一日くらい過ごせるし、怒る相手もい
ない、そしてこの人がかわりに謝っている
「はい、ありがとうございます」
と微妙な返事となってしまった。
女の人はきょとんとした顔をし、すぐにまた笑顔に戻り。
「お風呂今はいったところなのでよかったら入ってくださいね」
と言い、部屋を後にした。
部屋は6畳くらいのひとまで布団用の押し入れがあった。
一人でいるには十分な広さである。
床は畳張りで暑くも寒くもない
い草の匂いが心を和ませる。
しばらく休憩して僕は言われたとおりお風呂をいただくことにした。



お風呂って・・・どこだ・・・



どうにかお風呂場に着いて、体を休めることができた。

お風呂は広くて二人くらいはいれるくらいであった。

しばらくすると、脱衣所で音がした。
ああータオルを持ってきてくれたのかな?
感謝、感謝。

(ガラッ)




へっ?
今ガラガラって・・・



お風呂場に僕以外の影が一つ。
思わず目を見開き、そちらの方へ顔を向けてしまう。


「う、うわっ!」
「・・・・・・」



影の人は分からなかったけど、明らかにみられた。


しょ初日から・・・


お風呂から出ると声を掛けられた。
「どうでしたか?」玄関で出迎えてくれた女の人だ。
この人ではないな・・・と直感で分かった。
「はい、丁度よかったです」
僕は普通に答えた。「これから夕食なので準備が終わったら居間に来てくださいね」
と言って僕の前からいなくなった。


あの後はつらい・・・



といってもしょうがないので、挨拶も兼ねて居間にいくことにした。

どんな顔をしろと・・・

居間に着くと、5人ほどの人が集まっていた。

この中に・・・


うっ・・・いっ居づらい。
顔が赤くなる。


「さあここですよ」席をすすめられ座る。
これで動くことができなくなった。

玄関で出迎えてくれた女の人がパンと手を叩いて言った。
「はい、じゃあ食事の前に自己紹介して行きましょうか?私の名前は翔子(しょうこ)と
いいます。翔子さんって呼んでくださいね」
その後ペコリと一礼。
つられて僕も一礼。「続いてお父さん、私の夫です。名前は尚人(なおと)さんごくふ
つーのサラリーマンです」
僕はペコリと一礼。だが尚人さんは微動だにせず僕を見る。僕が目を上げると赤くなって
目をそらしもじもじとしている。
?なんだ?

「次ー亜花里(あかり)ちゃーん」
「はーい、あかりです!ななさいです!ヨロシク!ええと・・・」
「笹原裕之っていうんだ。よろしくね」
「うん!ひろくんヨロシク!」
・・・アカリちゃんの3倍くらいの歳なんだけどな〜

「次ー聡(さとし)ちゃーん」
「・・・ちゃんづけはやめてよ・・・小林聡です。14歳。よろしくお願いします」
「よろしくね。サトシ君」
うーんつかみ所のないこだなー
反抗期ってやつか。
「次ーアケミちゃん」
「えっえーとこれからよろしくお願いしますッ!ご迷惑おかけしますがッ!17歳で
すッ!」
「よっよろしく・・・」
なっなんかキンチョーしまくってるって感じだ。
もしや、このこがさっき・・・

想像すると体が熱く・・・
ううっ!居づらい。


「じゃあ最後に裕之君!」
僕は深呼吸していった。
「さっき言ったからなまえはいいだろうけどもう一度言います。笹原裕之、20歳、大学
生です。今日からお世話になります。家庭教師兼、居候、家族のような関係になれたら良
いなと思います。どうぞよろしく」
拍手が起こる。
なぜ・・・
こういう場面は初めてでは無いけどキンチョーするもんなんだな。



食事はその後すぐに始まった。
料理はコロッケとサラダ、そしてお味噌汁。
コロッケ大好きです。
始まってすぐ。
「あれ、お父さん、いつもは先に好きなの食べるのに・・・今日は違うんですね」
尚人さんはそういわれるとなぜか僕のお皿にコロッケを・・・
「・・・・・」
尚人さんは僕を見てウインクを・・・


まさか・・・
そんな・・・
僕は悟ったあの時のシルエットは大きくて子供の影とは・・・



「あっありがとうございます」
断るのも悪い気がしてもらっておいた。
ま、まあ悪い事じゃないんだ。好意は受けといて損は無い。
行き過ぎなければ・・・
「あげるんだ?おかずの中で一番好きなのにものなのに」

背筋が凍る。
理想と現実、事実と真実、空想と理論、《意味不明》まさか禁断のあれ?



>「口に合わなかった?」
翔子さんは心配そうに僕の顔を見つめる。
「いっいえ!おいしいです!」
「そう、ならよかった」



正直、ご飯の味を確かめるより尚人さんが怖い方が勝り、全く味わえなかった。


部屋に戻って一息、まさか、ね。
うん
でも百人いたらひとりはって言うし・・・


ほんと初日から・・・きついなぁ・・・


と思っていると、
(とんとん)
とノックの音、
僕の安堵は一瞬にして覚めた。
おそるおそる襖の隙間から見てみると、そこにはアケミちゃん(だっけかな?)
が立っていた。
「あっあのっ!今よろしいですか!?」
僕は胸を撫で安心した。
いや、尚人さんがそうともかぎらない(とおもいたい)けど。

「わからないとこがあって・・・お暇ですか?」
という。
暇というか、うーん荷物も無いし、する事すらない。
まさに暇人の中の暇人だった。
「うん」
短く一言、
「じゃあここなんですが・・・」


そんなこんなで小林さんのうちに大学に通いながら、家庭教師をして宿を貸して貰うとい
う関係となった僕。
金銭的よゆーのない僕にとっておこずかいが貰え、ご飯も貰えるという夢のような環境で
あるが、その欠点も気付いてしまった僕。
これからどうなってしまうのか・・・・
どうなのかなぁ・・・

 
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