BATON
 
〜友達〜


「夕食までには変える予定だったんですけどね・・・暗くなっていたので食べて帰ってきました」

結局、年上権限とか何とかで嵯峨野さんが全員ぶんの食事を出した。
聞く所によると、
「ダフ屋で・・・」

だそうだ・・・
お金のあったことはわかるけども・・・それははんざ・・・
いや・・・言うのはやめておこう・・・


「そうですか〜なら明日の朝にでも食べてくださいね〜」
翔子さんは料理をラップしてから冷蔵庫に入れる。
「ありがとうございます」
「いえいえ〜」

僕はひと言翔子さんに礼を言って、自分の部屋へと入っていった。
入ってみるとそこには長瀬君が寝転がりながらポテトチップを食べ、
テレビのリモコンを持ちくつろいでいた・・・

自分のうちみたいだな・・・

「よう!!おそかったな」
「いや、長瀬君いつまでここに・・・」

長瀬君と反対のちゃぶ台の向かい側ではサトシ君が黙々と勉強していた。

「全ての欲望を絶ち、精神統一し、一点集中の悟りを開く授業スタイルだ!!」
長瀬君は自身たっぷりにこじつけの理屈を言う・・・
「いや・・・・あはははは・・・・」

長瀬君・・・それはただのめんどくさがりなだけだよ・・・

「終わりました・・・」
サトシ君はそう言い残すとちゃぶ台の上に頭をごつんとぶつけそのまま眠った。

「・・・・・・相当疲れたんだね・・・」
「よく頑張った!!これでキミは勉強のみに集中できる身体に・・・」

いや・・・サトシ君、ノイローゼになりそうなんですが・・・



長瀬君を家から送った後、僕はサトシ君を部屋まで送っていった。
聡君の部屋に入ると、サッカー選手のポスター、サッカーボール、記念メダル・・・

ありとあらゆるサッカーに関するものがおいてあった。

僕がサトシ君をベットの上に寝かせると部屋を出た。



サトシ君やアケミちゃんの授業をする時はいつも僕の部屋でやっている。
理由は二人そろって、
『恥かしいから』

にたもの兄弟なのかも・・・とちょっと思ったりもした。


しかし、
サトシ君がサッカーか・・・
イメージピッタリかもね・・・

・・・・・・・僕より身長あるし・・・・・・

・・・・・・ちょっとそれは憂鬱だったりする・・・

20代と言う威厳がまったくと言ってないほど僕は・・・


いや、考えるのもよしておこう・・・
自分を苦しめるだけだし・・・






翌日、


「起きるのだー!!」
いきなり耳元で大声をあげられた・・・
・・・ミミが・・・鼓膜が・・・
神経が・・・目が・・・眠気が・・・

・・・ぐぅ・・・・

「起きるのだ!!もう八時であるぞ!!」
・・・なんとか派知事・・・八時・・・?八時!?

「うわ!!今日1時間目からだ!!」
僕は跳ね起きた・・・
でも頭の中がグワングワンとする・・・

響く・・・

「・・・・・・アカリちゃん・・・もっと別の起こし方を・・・」
「起こしてもらってそう言うな!!早く朝餉を食べるのだ!!」
アカリちゃんはいつも朝はこんな感じで昼間と性格が違う・・・

翔子さんは
「気にしないでくださいね?いつもの事ですから・・・」

と意味深しげな事を・・・

だからあまり深くは考えない。


ご飯にお味噌汁をかけて・・・
できました!!ねこまんま!!
「ズズゥーーーー!!」
・・・あつい!!
そしてサラダを食べて・・・
出動!!




間一髪で教室の中に滑り込んだ・・・
「すいません!!遅れそうでした!!」
僕は教室の扉を開けるとともに叫ぶ・・・
今日の1時間目は予約した先生の授業を受けるというもの・・・
というか指導を受けるというかな?
フルートの人はフルートの先生とかそんな感じ。

そこそこ有名な先生。
だいぶ有名な先生。
いろいろいるんだけれども・・・

第一人者!!みたいな人はあまりいない・・・


まぁ、その音は個人の目指す音によって変わるけども・・・


先生からの指摘を受けて、自分なりに解消する。
それが僕のスタイル見たいな感じである。

いままで、完全にケイのような音をだす先生にはまだあった事は無い・・・
あの、ケイの音楽に・・・



1時間目が終わり、僕は2時間目は授業が無かったのでのんびりしていた。
大学構内のベンチに座って、ちょっとした本を読んだりするのも考えたけども・・・
のめりこむと時間を忘れてしまう・・・それが怖いので一回でやめた・・・

ということで、構内の喫茶店に入ることにした。
「お、ササ先輩じゃないですか。どもー」
喫茶店に入るとすぐに声をかけえられた。
「ああ、小津さん。どうもー」
「もういいです・・・小津で・・・」
小津さんは大きくため息をついた。

「こんな所であうなんてねー。何してたの?」
「これ見てください・・・」
小津さんは僕の目の前にテーブルに置いてあった三角錐の紙を突き出した。
「ええっと・・・ぱふぇ・・・こんてすと?」
「そうです!!パフェコンテスト!!略してパフェコン!!」
小津さんはいきなり大きな声になって主張するかのようにテーブルに両手をついた。
「このパフェコン・・・学生達がそれぞれパフェを作りあって競うというものです・・・
 しかーーーし!!それだけじゃありません!!このパフェコン!!もし三位以内入賞すると
 この喫茶店で半年間販売されるようになるんですよ!!」
「へ・・・へぇ・・・」
僕は小津さんの勢いに圧倒されている・・・
「しかも!!そのパフェコンで入賞したら、本とかで言う印税のようなものが5%入るんですよ!!」
小津さんって・・・お金が好きなのかな・・・
「こんな素敵な大会・・・参加しないてはないですよね!!」
「そっそうだね・・・」
正直怖い・・・
「それならば早速・・・この大会申込書に・・・」
「ごめん・・・僕料理とかあんまり・・・」

・・・・・・・・・・・・・・

夏っていうのに寒い風が・・・

「そうですよね・・・普通の人は料理なんてしてないですよね・・・」
いきなり意気消沈する・・・
「違う人探してみます・・・」
小津さんは三角錐を手に携え、とぼとぼと喫茶店を後にした・・・

「・・・おもしろそうなんだけどね・・・」
僕はその背中をみていた・・・

「ちょっと・・・あの人の知り合い?」
店の人が僕に近寄ってきた。
「そうですが・・・」
「よかった・・・じゃあ580円ね♪」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」




よけいな出費というのか・・・
ちょっと悲しい・・・
昼時になったところで僕は食堂へと向かっていった。



「あ、笹原先輩。こんにちわ」
食堂に入ると早川君・・・郁人君がいた。
なんかさっきと同じパターン・・・

「こんにちわー・・・お昼ご飯?」
「そうですよ。新しいメニューができたみたいなので・・・ためしに買ってみました」
「どんなの?」
「カレーラーメンっていうもので」

「すいませーん!!カレーラーメンくださーい!!」
「はっ・・・・はやいですね・・・・」


さすがというべきか・・・
あのカップ麺のようにカレーとラーメンの味を合わせる技術は難しいと思っていたが、
この食堂でのカレーの技術は申し分ない・・・
だから僕は信じた・・・

そして衝撃が走った・・・




「・・・・・・・邪道だ・・・」
「はははははは・・・・」
僕の口の中で奏でられる不協和音・・・
麺に絡みつく、崩れたジャガイモ・・・
どれもこれも今ひとつ・・・

・・・・・勿体無いから全て食べきった・・・




「ところで笹原さん、夏休みが終わったらある大学祭に出る予定は?」
「いつも僕は見て回るほう・・・参加とかは何をするかとか考えられないし・・・」
回っていたらいつも、ウチのサークルはいらない?
先輩達もやさしいよ!!
といわれていた・・・
二年生の頃の事で、一年生から言われた事は少なからずショックだった・・・

「それならば、演劇サークルの寸劇に音響として出ませんか?」
「え?・・・寸劇?」
演劇サークルにそんなものあったか?

「一年生だけでやる劇ですよー」
「ああ・・・そうなんだ・・・知らなかったー」
「で、音響に誘われたんで、でも僕は少しのピアノとリズムを取ることしかできないもので・・・」
そう言えば郁人君のパートを僕は知らなかった・・・

「そう言えば、早川君って何してるの?」
僕は素直に聞いてみた。
「僕は指揮ですよー」
そういいながらバックの中に手を突っ込んだ・・・
そのバックの中から指揮棒の箱が出てきた。

中にはとても綺麗で、光を放っているかのような明るさのかんじられる色の指揮棒が入っていた。
「マイスティックです!!」
そう言って郁人君は指揮棒を振る。
その動きは柔らかく、とても暖かなものであった・・・
「寸劇のリズムはこんな感じです」

・・・・その動作の一つ一つに曲の感じが出ていた・・・
「・・・・・・あ・・・で、その寸劇のタイトルは・・・?」
「『人間になりたがった猫』です」
それは聞いた事ある・・・

小学校の時だったか・・・どこかのクラスが学芸会でやっていた・・・

「僕でよければ」
僕は承諾した・・・
大学祭の時に何もする事はないし、参加してこそ面白いものだと思う・・・
しかも・・・指揮者が郁人君ならばもう一度その指揮を見たいと思った。

「笹原さんはフルートですよね。たぶんジリアンのところで・・・・・」



僕たちはそのあと少し話し合った・・・
その劇の事、曲の事・・・


その後の授業があったので、本当に少しで終わったのだけど・・・




二、三時間後授業が終わったので、演劇部の一年生の所にスコアをもらいに行った。
また、一年生と間違えられた・・・


その帰る途中に今日一度もあってない人が前に立ちふさがる。
「あたまひとつでこのよは〜♪」

・・・演劇の仲間か・・・
「よう!!俺も呼ばれてさ!!困った時はお互い様ってね!!」
「・・・・ちえをつかってきぶんをーかえりゃこころはおどるさー♪」
「とっきどっきじんせーいーまーっくらやみだけどー♪」
「・・・って長瀬君も!?」
「おう!!そうだぞー」

以外だ・・・
長瀬君はアメフトだから模擬店でもするのかと思っていた。

「おれと一緒に探そうぜ!!ライオネル!!」

・・・・・・劇の内容を知らない人には意味不明な会話だ・・・
・・・まぁそれも面白い・・・けど・・・

ただでさえ身長にギャップがある僕たちを見れば人目を引くからかなり目立っている・・・
そしてこんな会話が加わると・・・

「ジリアン役のこってかわいいよなー・・・」
「だまれ、スワガード・・・」

僕たちは本当に知らない人にとっては何かわからない会話を延々としていた・・・





家に帰ると、いきなりアカリちゃんが出迎えてきた・・・
「おかえりー!!ヒローーー!!」
いきなりみぞおちにアカリちゃんの頭がつきささった・・・
その動作は何故かスローモーションで僕の目には見えた。

「ぐふっ・・・」
僕はその場でうずくまる・・・
「ゲームしよ!!」
身悶えている僕に容赦なく腕を取り、部屋まで引きずり込まれた・・・
なすすべなく僕は引きずられる・・・
途中で翔子さんと目が合い。
「なかよしですね〜」
とか言われた。


何か今日は・・・運がいいのか悪いのか・・・


その後、アカリちゃんの部屋で一緒にTVゲームをして夕食までをすごした・・・
・・・・・・なぜか挌闘系が多くて僕は苦戦した・・・






夕食後、僕は翔子さんに呼び止められた。
「ちょっと話があるので残っていてください」
と言われた・・・

何もする用事がないので、その場で座って待っていた。
洗物が終わって、翔子さんは自分の正面に座った。

「ごめんなさいね〜呼び止めてしまって」
「いえいえ・・・それより話ってなんですか?」
僕は何か気になっていたので率直に尋ねてみた。
「はい、それはアケミちゃんやサトシちゃんの事ではなく、アカリちゃんの事なんですよ」
僕は少しほっとした・・・

もしかしたら家庭教師が効果がないとか言われるのか!!とちょっと思ったりもしていたから・・・
「あ、家庭教師のほうは気になさらないでください。ちゃんと成績上向きですよ〜」
・・・エスパー?・・・

今考えている事を的確に突かれた・・・

「アカリちゃんはあれでもさみしがり屋なんですよ・・・」
少し意外だった・・・
アカリちゃんは元気いっぱいでいつも笑顔だったからだ・・・

「お姉ちゃんやお兄ちゃんとあまり遊べなくなって、今、さみしい思いをしているのだと思います」
いままで一緒に遊んできた兄弟の人達がいきなり遊べなくなることが・・・・

「だから、笹原さん・・・良ければでいいんですが・・・」
僕は翔子さんが話し掛ける前に言葉を出す。

「いいですよ、僕はアカリちゃんのお兄さんだし、遊んでいると僕も楽しいですしそれに・・・」
僕は声を本心で和らげて言う・・・
「僕も皆さんと一緒で、アカリちゃんの笑顔が好きなんですから」

翔子さんは笑顔になる。
「そうですかぁ!!ありがとうございますぅー。アカリちゃんも喜びますよ〜」
僕も経験がある。
妹といつも遊んでいたんだけど、受検の時はほとんど相手をしてあげられなかった・・・
妹は学校に友達はいたけど、家に帰ると、さみしそうな顔をしていた。

せめて、その顔を少しでも笑顔に変えられるように・・・
僕はアカリちゃんと遊んであげよう。




「あっ、忘れてましたー」
翔子さんは廊下に出ようとする僕の後ろで言った。
「一週間後くらいですか・・・妹さんが遊びに来るそうですよ」
・・・・・
ええー!!聞いてないーーー!!
「夏休みが始まるとかで、お兄ちゃんの様子を見にくるーとかで」

きっ・・・希美が・・・


「あっそれだけなのでー」

希美が・・・


それは僕にとっては衝撃的なことだった・・・・・・
それだけの事が・・・
 
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