BATON
〜出会い〜




「昼食はやっぱりカツ丼だ!」
そう叫んでいる人がいる。
僕はどちらかと言うとカレー派だ。
カツ丼も美味しいと思うんだけど、やっぱりカレーだね。
カレーはほとんど手作り、他のものは暖めただけ、みたいな感じがするからねー。
「ようササ!カツ丼はさいこーだな」
長瀬君だった。
「うーんそうなのかなー。僕はカレーだけどなー」
「・・・こども?」
「そういうこという人が人が子供って言われるんだよ」
僕はもくもくとカレーを食べる。
「ところでサークル入ってくれそうなひといたか?」
はっきり言っていなかった。
バイトしたいからと言う人がいて店をすすめたりしたほどだし。
「だめ」
「一言で片付けるな!」
もしかして・・・ぴんちなのか?アメフトは。
「まあがんばってよ。僕は協力できないけど」
僕は年の割に背が低く、普通の人と比べると小柄だ。
敢えて身長は臥せますが・・・
「まー、155のお前には頼まないけど」
「失礼な、もっとあるよ」
「イチニセンチくらいだろ」
「うっ!」
「もしかしてあたりか?そんなに小さかったとは・・・」
ああっ!もうっ!
「僕はこれからなの!」
「20代の言うセリフか?それ」



もう・・・いい・・・



しばらく歩いているとサークル紹介のひとに新入生と間違えられた・・・
しかも後輩に・・・



桜並木があるキャンパスの正門までの道、今の時期には一番きれいに桜が見える。
僕が入学した時は何もかもが新鮮に感じて桜をとてもきれいに感じた事を覚えている。
今でもその感情があふれて来る。
桜を見ているとなぜだか嬉しい気持ちというか、うきうきとする。
桜を見上げながら正門までの道を歩く。
流れる桜をピンク色の川のように感じた。
まるで川上で血にぬれた刀を・・・


ゲシっ!

ん?

なんか蹴った。

変なこと考えてたからか?
下を見る。
眼鏡がある。
それ以前に男の子がうつむいて倒れてる。


1、大丈夫ですか?

2、早く救急車を!

3、なんでだよ!と爆○問題のようにつっこんでみる

4、おお勇者よ死んでしまうとは情けない



今一瞬、変なものが頭の中に流れた・・・


いやいやそれはともかく


「大丈夫ですか?」と普通に言う。
男の子はこちらに顔を向ける。
「・・・すいません、すぐに立ちます・・・」
男の子はよろよろと立つ。
しかしすぐに膝をついてしまう。
「ねえ?ほんとに大丈夫?」
というと、男の子は
「すいません、少し休みます」
といい、そばにある桜の木に体を預ける。
「あのっ眼鏡」
僕はその子のものと思われる眼鏡をさしだす。
「あっ・・・ありがとうございます」
と受けとる男の子、だけど眼鏡はかけない。
僕は恐る恐る聞いてみた。
「体、わるいの?」
男の子の体はビクンと震えたけど、すぐにこちらをむき、
「実はちょっと・・・部活の勧誘でお酒を飲まされまして」
と、ニコニコしながら言う。
僕は直感で嘘だと気付いた。
だけど本人は隠そうとしている。
だから僕は気付かないふりをする。
「ふーん、気をつけてね、みんな躍起になってるから」
と話を合わせる。
「はい、気をつけます・・・」
頭をかきながら言う。
笑いながらもどこか寂しそうな顔だった。



しばらくして、


「ありがとうございました。笹原さん、助かりました。」
深く頭を下げる。
「いやいや、気にしないで、ぼくが始めに通り掛かっただけだから」
といって立ち上がる。
「ほら」
僕は手を差し延べる。
「すいません」
と手を取る早川(はやかわ)くん。
早川君は新入生らしく、自宅から通っているらしい。

「それじゃ、きをつけてかえってね」
僕らはそこで別れる。
何を隠しているのかは何となく分かる。
けれどもこの時僕はそんなに深く早川君の事を考えて無かった。



授業は午前中に終わったのですぐに家に帰った。

家に帰ってから送ってきてもらった自転車で外にでた。

今まで大学から駅までの道しか知らないでいたからとても新鮮だ。
サイクリーングいやっほーい!!


と真面目に楽しみながら本心で言える人が実際にいるのだろうか。

言えるとしたらそれはとても幸せな人だ。
それだけ、人生の楽しみがあると言う事だから・・・



考えすぎか・・・



ふーん、こんな店があったんだー
とかいろんなことに気がついて感心した。
僕はこの町に来てからまだ数日だけど、二年くらいここに通っていた。
もちろん自宅からだけど家が遠く、電車で通っていた。
資金的にというか時間的に余裕が欲しかった僕にとっては今の状況はとても助かってい
る。
というかとても嬉しい。
教育者志望というわけではないけど、家庭教師でタダめし、しかも寝床、電気水道代込
み!
やっぱさいこー!

母方の親戚と言う事でこんないい状況になったんだけど、親戚なのに全くあったことがなかった。

いや全くというか、一回、いくらか前に会ったことがあるらしいけど、そんな昔のこと覚えていない。
言ってみれば、アケミちゃんとサトシ君しか生まれてなかったらしい。
しかもサトシ君は赤ちゃん。
覚えているはずもない。

まあ今は感謝しなきゃね。



「ヒロちゃん!!!」
聞き覚えのある声、なぜか後ろから。
「ん?うわっ!」

振り返ると荷台にアカリちゃんが乗っていた。
「えっ?なんで!?」
止まった覚えはない。
走り乗った?いやまさか・・・
「その人ダレ〜?」
アカリちゃんの友達らしき子たちが三人いる。
「ヒロはねーわたしの家族なの!」
という。
家族・・・か・・・うん!いい響き・・・
「へ〜だれの?」
と意味不明の言葉を発する。
それに対し、
「わたしの〜!」
とアカリちゃんが言うとみんなはキャーキャー言いながら集まって話をするような形にな
る。
全然わからん、なにがキャーなの?
「どこいくのー?ヒロー?」
と聞かれる。
どこ行くでもないけど。
「デパートとか色々だよ」
という。
友達たちはやさしーいとか言っている。
「じゃあわたしも行く!」
というアカリちゃん。
「でもいいの?友達たちは?」
「うん!どうせわたしのうちが近いからこっちの方が一緒にいれるし!」
デパートのほうがみんなの帰り道らしい。
「私たちはいいから二人で行きなよー」
いや、なんか流れが分かったような分からないような。
まあ一緒の道なんだから。
「みんなの荷物僕の自転車にのせなよ。重そうだし」
荷物はランドセルではなく、バックなので4個はいれられる。
「「やさしーい」」
とハモる声。
なんか恥ずかしい。
というかここって学校の近くだから、不審者と間違えられないか?

僕はみんなのバックを受けとると、カゴにつめる。
全部ははいらなかった。
仕方ない、と僕は肩に一つかける。
「あっ」
一人の女の子が いう。

「ありがとうございます」



デパートに到着、みんなと別れる。
「私、早川といいます」
となぜかおとなしめの子が挨拶。
「ん?」
聞いたことがある名前、
「もしかして、お兄ちゃんとかいる?」
と言ってみる。
「えっ?なんで知っているんですか?」
とびっくりする。
「今日、そのお兄ちゃんがお酒飲まされて調子悪かったらしいけど」
「そうですか・・・」
となぜか悲しい顔。
「あっ、早川じゃ面倒ですよね。お兄ちゃんは郁人(いくと)私は月(るな)です」
とまたも挨拶。
「お兄ちゃんと仲良くしてあげてくださいね・・・」
とニコっと笑いながらも寂しい顔。
昼と一緒だ。
郁人君と・・・



それっきりで別れたアカリちゃんの友達たち。
僕の中で何かが引っ掛かる。
あの笑顔。
あの反応。
何があるのか。
考えは嫌な方へと流れる。
いやそんな決まった事では無い。
きっと考えすぎだ。


「アカリねーアイス食べたい!」
と突然言い出し31と書かれたアイス屋を指差す。
「うんいいよ」
と僕はアイスを買いに並ぶ。
あっどれがいいのか聞いて無いや。
まっいっか。
こっちのおごりだし。



チーズケーキとイチゴのダブルを買い渡した。
「わー!なんで好きなものわかったの?」
「いやなんとなくだけどね」
ほんとに何となく。「なんでもおみとおしってやつだね!」
「うーんそうなのかなー」

美味しそうに食べるアカリちゃん。
「でも多いからちょっとたべて〜」
「ん」
差し出されたアイスを食べる。
やっぱり、アイス屋チェーンの名は伊達じゃないな。
とーーーーっても美味しい。
「あっ!間接キスー」
・・・この子は・・・
「あああああぁ!!!!間接キス!!!」
こいつは・・・
「長瀬君・・・考えてみてよ・・・この子とは年の差が・・・」


前を向くと長瀬君プラス同じ学科の人が10人くらいいる。

するとアカリちゃんは、
「だいじょーぶ!!ヒロ!!アイサエアレバトシノサナンテ」
という。
「どこで覚えたの!そんなセリフ!」
「ドラマ〜」
「とにかく!長瀬君そんなんじゃないから!」
「ひどい!ワタシトノカンケイハアソビダッタノネ!」
「いっいやっ遊びでは無いけどそんな関係でも」
「うわーこいつマジだよ。マジで弁解してるよ」
と笑いながら言う長瀬君。
もうなにがなんだか
「じゃあアイガアルノだね!」
「・・・・・もう・・・・・いい・・・・・・」
「ふふふふふらぶらぶですなー」
笑いながら長瀬君は言う。

はあ〜・・・
目をつむりイスへと座る。

もう何も聞こえない。

「あのー」
何も。
「笹原さん?」
何も。
「笹原さ〜ん」
ん?違う声。
「あ、アケミちゃん」
「どうかしたんですか?」
それは

と言おうとした時、長瀬君たちはまだいて、
「・・・・・・・ササ・・・」
何かわからない不安。
「なっなに?」
恐る恐る聞く僕。
「このお嬢様はダレでございますか?」
僕の肩に手をやり骨が折れんばかりの力で押さえつける。
「・・・小林・・・アケミちゃん、僕の親戚というかハトコ!!いいから放して・・・」
「おぉ!アケミさんあなたは私の太陽、いや、空気!無くてはならない存在だ!」
と一昔前の言葉を発する。
それでようやく手が離れる。
「ええー!」
焦るアケミちゃん、言い寄る長瀬君、離れないアカリちゃん、取り残された同じ学科の
人。
だれもがあらゆる感情をもちつつその騒動(と言っても過言では無い)は終わった。
アカリちゃんは家に帰っても離れる事なく、食事も休憩中も離れなかった。
尚人さんはうらやましそうにこちら(おもにアカリちゃん)を見ていた。
 
なんかいや。
 
やっと今日も終わる。
今日は疲れた。
もうなにも考えられない。
そうだ、今日は何も考えないで寝よう。明日は普通に過ごせたらいいな・・・
 
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